サハラの巨大翼竜、獲物探しは徒歩で?

サハラ砂漠の砂の下から新種の巨大翼竜が発見されたとする研究が発表された。しかし、9500万年前に生息したこの翼竜は地上での生活を好み、一日の大半を、当時は緑豊かな湿地だったサハラ砂漠で獲物を追って歩き回って過ごしていた可能性が高い。

2008年にモロッコ南東部で化石が発見されたアランカ・サアリカフロム(Alanqa saharicafrom)は、7000万年ほど前に隆盛を極めた翼竜と同じアズダルコ科に属する。調査チームのリーダーで、アイルランド国立大学のユニバーシティ・カレッジ・ダブリンに在籍するニザール・イブラヒム氏によれば、新たに発見された顎と首の骨の化石は、大型翼竜の一種であるアズダルコ科の翼竜の現在確認されている中で最も古い祖先にあたることがわかったという。

アランカ・サアリカフロムは歯の無いくちばしのような顎と細長い首を持ち、翼幅は約6メートルだったと推測されるという。「つまり、この恐竜はアズダルコ科の翼竜のなかでも初期にあたるが、すでにかなり大型で、後の巨大翼竜と同じような体型をしていたことがわかる」。

また最近の研究は、アランカ・サアリカフロムのようなアズダルコ科の翼竜は、それほど頻繁に空を飛んでいなかったことを示している。例えば「アランカ・サアリカフロムは、コウノトリやサギのように、細く長い顎を使ってトカゲや小型恐竜を捕まえていたのかもしれない」とイブラハム氏は想像する。

翼竜の骨は軽く壊れやすいため化石として残ることがほとんどなく、特にアフリカで発掘されることは非常にまれだ。イブラハム氏は、「アフリカでこれまでに発見された翼竜の化石をすべて集めても、ほんの小さなテーブルの上におさまるくらいだ」という。しかし同氏の研究チームの発掘作業は終始幸運に恵まれた。アランカ・サアリカフロムの化石以外に、同時期に生息していたこれまでに確認されていない2種類の別種の翼竜と思われる化石のかけらも発見したのだ。

これは当時、複数の異なる種の翼竜が別々の獲物を食べながら河口の三角州で共存していたことを示している。例えば、まだ研究が進んでいない2種類のうちの1種は、水面を走るように動きまわりながら水中の魚をとるための薄く細長い歯を持っていた可能性がある。イブラヒム氏は、乾燥した陸地に囲まれたこの湿地帯の生態系が、さまざまな種類のワニや恐竜の生命をも支えていたことを指摘し「驚くほど豊かな環境だったようだ」と語った。

この研究はオンラインジャーナル「PLoS ONE」誌に2010年5月26日付で掲載されている。



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