未来の科学技術 31年に宇宙旅行 40年に有人月面基地

文部科学省科学技術政策研究所は10日、今後30年間に実現しそうな新技術を発表した。大学や企業など専門家の意見を踏まえたもので、環境技術や宇宙分野での進展が期待されているのが特徴だ。

調査は71年から5年おきに行われ、今回で9回目。分野の異なる専門家135人が12分科会をつくり、解決すべき技術課題として計832項目を列挙。2040年までの実現性などを有識者にアンケート調査し、延べ2900人が回答した。

地球温暖化問題への関心の高まりから、環境・エネルギーや情報通信の技術に回答が集中。また、「自動車の大部分はリースか共有」(24年)となりマイカーは消えるなど、人々の価値観も変わると予測している。しかし、温暖化の国際交渉で25年に「温室効果ガス半減に向け、途上国を含めた計画策定が実現」と悲観的な結論になった。

宇宙開発では、31年に宇宙旅行が広まり、40年には有人月面基地が現れる。

技術発展のため「関係を強化すべき国」には、従来の欧米に加えて中国を挙げる意見が増え、ここでも環境問題などで中国の存在感の大きさが反映した。

予測には「政策提言や制度設計の際に社会的重要性や国内外での影響などを詳しく分析し、問題点を把握する技術」が33年に実現するという結論も。「政治を科学する」と訴えた鳩山由紀夫前首相の登場は20年以上早かったようだ。

一方で、5年前の前回調査に比べ、原子力発電の解体技術や家事・介護ロボットの普及、地震予知分野では数年ずつ実現が遅れるという予測結果になった。【山田大輔


◇主な新技術の実現・普及予測◇

2020年 新聞紙に代わる薄く軟らかい電子ディスプレーが普及
2022年 献血が要らない人工血液の開発
2023年 がん転移を抑える薬の開発
     羽田空港の発着便数が倍増できる航空管制システムの開発
2024年 自動車などエネルギーを多く使う物は大部分リースか共有に
2025年 充電1回で500キロ走行できる電気自動車の普及
     中傷など問題情報をネット上で検知、自浄作用を促す技術
     温室効果ガス半減に向け、途上国を含めた計画策定が実現
2026年 生体認証技術で外国旅行がパスポート不要に
     家畜の異常を早期察知する高感度センサーネットワーク普及
     家事や介護など生活支援ロボットの普及
2027年 感染症の発生や広がりの迅速な予測技術の確立
     テロや環境汚染を防ぐ知覚能力を備えたロボットの警察配備
2028年 においや味が再現できるディスプレーの実現
     感覚機能を備えた義手・義足の実現
     原発の安全で合理的な解体撤去技術の確立
2029年 燃料電池を使った船や鉄道の普及
2030年 血管の中を移動できるマイクロセンサーを使った医療技術
     テレビや本の感想を語り合える知能ロボットの開発
2031年 地球周回軌道の宇宙観光旅行
2033年 政策提言や制度設計で社会的重要性などを分析する技術
     iPS細胞で作った腎臓や肝臓など人工臓器の実現
2035年 目的地を入力すると自動運転で到着できるシステム普及
     海水からウランなど希少金属を経済的に取り出す技術の確立
2036年 金融・経済政策が精密になり、景気変動が大幅に減る
2037年 M6以上の地震の数カ月〜1年先の予測技術が確立
2038年 化石燃料に依存しない航空機の実現
2040年 有人月面基地が実現


毎日新聞