太陽嵐が地球に到達、オーロラ出現か

8月3日の深夜から4日の未明(北米現地時間、以下日時は同様)にかけて、波打つオーロラによる素晴らしい天空ショーを広い地域で観測できる可能性があるという。

 8月1日、NASAの太陽観測衛星ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)に搭載されたカメラが太陽の表面で起こった爆発を捉えた。この爆発により、荷電ガスであるプラズマが直接地球に向けて大量に放出されるコロナ質量放出という現象が起きた。

 このような電離したガスの雲が地球の大気圏に到達するには数日かかるため、今回の爆発で発生した荷電粒子のバーストは8月3日の夜に地球に到達し、特に色鮮やかなオーロラを出現させる可能性がある。

 オーロラは太陽から放出された荷電粒子と地球の磁場との相互作用によって発生する。荷電粒子は地球の北極と南極に向かって伸びる磁力線に沿って地球に降りていき、大気中の窒素原子や酸素原子と衝突する。その際、荷電粒子によって大気中の原子のエネルギー量が増大し、このエネルギーが放出されて光となり、緑や赤などの色にきらめく光のカーテンが出現する。

 北半球ではオーロラはアラスカ、カナダ、スカンジナビア半島の北極地方など高緯度地域で主に観測される。しかし今回のような爆発で発生する磁気嵐のために、観測できる範囲が通常よりも緯度の低い地域まで拡大することがある。加えて、今回は磁気嵐によってオーロラが波打つ現象も期待できるという。

 ただし、地球に向かう太陽嵐が必ずオーロラを発生させるとは限らない。太陽観測衛星の数が限られている現状では、コロナ質量放出が地球の大気に及ぼす影響を正確に予測するのは難しい。

 ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのレオン・ゴラブ氏は、今回北の空にオーロラが出現する確率は約50%だと述べる。オーロラを観測したければ、「夜おそく、できれば真夜中頃に暗い場所で北の空を見上げるといい」と同氏は助言する。

 今回の太陽嵐は、太陽活動が異例の長期間に渡った停滞期を終えて活発化し始めたことを示す兆候の1つでもあるという。太陽活動は約11年周期で活発化と停滞を繰り返す。前回の極大期は2001年に終わり、その後長い停滞期に入った。最近になって黒点の数が急増しているのに加え、8月1日に表面爆発が発生したことで、太陽が再び目を覚ましたと考えられている。オーロラファンには良いニュースだが、人工衛星や宇宙飛行士、地上で稼動している一部の電子機器・設備への悪影響も懸念される。

 エネルギーの強い太陽嵐が発生すると、通信システムやナビゲーションシステムが混乱したり、電力供給網が送電不能になったり、宇宙で活動を行う宇宙飛行士が危険な放射線を浴びたりする恐れがある。

 今回の太陽嵐は比較的弱いため悪影響が広範囲に及ぶ可能性は低いが、次回以降の太陽嵐では大きな影響が出ることもあるだろうとゴラブ氏は話す。「(SDOなどの)観測装置を宇宙に配備する大きな目的の1つは、ハリケーンの予報と同じように、地球に影響が及びそうな現象の発生を前もって認識できるようにすることだ」。