夜空のピラミッド“黄道光”が見ごろに

9月中旬、北半球では黄道光とよばれるピラミッド型の淡い光のタワーが観測しやすくなる。黄道光を観測するには春分秋分のころが最適だ。秋には日の出の約1時間前に東の地平線の上空を、春には日没直前に西の地平線の上空を見るとよい。

 黄道光は最も明るく見える場合でも天の川の暗い部分ほどの明るさしかないため、大気中のもや、明るい月光、光害などがあると、そのほのかな光の三角形は見えなくなってしまう。

 一般に黄道光が見えやすいのは、空の暗い郊外で、特に月の出ていない夜である。月が完全に地球の影に隠れる新月に当たる2010年9月8日から、月が満ちていく数日間は観測の好条件が揃うことになる。

 秋の黄道光は日の出に近い時間帯に出現するため、昔は朝日の光と間違えられることが多く、“偽りの夜明け(false dawn)”と呼ばれるようになった。シカゴにあるアドラープラネタリウム天文学者ゲザ・ギュク氏は、「イスラム教の世界では、黄道光と本物の夜明けを見分けることは礼拝時刻の判断に関わる重要な問題だ」と説明する。

 ただし、黄道光は特徴のある形をしているため、朝日の光と見分けることができるはずだという。「朝日の光は地平線に対して平行だが、黄道光は主に垂直の柱状かピラミッド型をしている。太陽が昇る前に現れる三角形の柔らかい真珠色の輝きが黄道光だ」。

 天の川の恒星やガスが地球から何光年ものかなたに広がっているのと異なり、黄道光の発生源は内太陽系に存在する。内太陽系には何10億個ものちりの粒が黄道に沿って平らな円盤状に広がり、太陽を周回している。黄道とは地球から見た太陽の見かけの通り道を結んだ太陽系の仮想的な平面で、黄道12星座の通り道でもある。

 このちりの円盤は“黄道光塵雲(こうどうこうじんうん)“と呼ばれ、太陽付近から火星の軌道を越え、木星の軌道に向かって広がっている。このちりに太陽光が反射して拡散し、地上からは光の輝きとして見える。「太陽系のちりは黄道の平面に沿って集中しているので、黄道光も同様に集中する」とギュク氏は語る。

 黄道光は1年を通して観測可能だが、北半球の中緯度地域では春と秋に黄道が地平線に対してほぼ垂直となる。そのため、平行に広がる日の出や日没の光と黄道光を見分けやすくなる。

 最近まで、黄道光塵雲のちりのほとんどは小惑星の衝突によってできたと考えられていた。しかし2010年4月に発表された研究では、このちりは木星の軌道に接近した彗星の破片だとしている。この研究によると、巨大な木星の強い引力で彗星からちりが引き寄せられ、太陽を周回する軌道に集まることで、黄道光塵雲にちりが絶えず補充されているという。