月が遠地点に、2010年最小の満月

 月が縮んでいるかもしれないというのは本当の話だ。しかし、今週の満月が2010年で最も小さく暗くなるのはそのせいではない。

 8月25日午前2時(米東部標準時、以下同じ、日本時間25日午後3時)、月は地球から最も遠い“遠地点”に達する。これは、月が楕円軌道で地球を周回しているために起こる現象だ。逆に最も近い位置を“近地点”と呼ぶ。近地点も遠地点もおおむね1カ月に1度到達するが、月の軌道にはゆらぎがあるため、双方との正確な距離は年月の経過と共に変化する。また、月の満ち欠けの状態(月相)もそれぞれの位置で異なる。

 月は厳密には24日午後1時5分(日本時間25日午前2時5分)に満月となる。8月の満月は古くからネイティブアメリカンの間で“チョウザメ月”、“青トウモロコシ月”とも呼ばれてきた。その十数時間後、月は地球から40万6389キロの遠地点に到達する。

 2010年で満月が最も地球から近く、したがって最も大きく明るく見えたのは1月30日で、地球からの距離は35万6593キロだった。カナダのバンクーバーにあるH.R.マクミラン宇宙センターに常駐する天文学者ラミンダー・シン・サムラ氏は、「1月の満月は8月24日の満月に比べて地球からの距離が5万キロほど短かった。この距離の違いから、今回の満月は近地点の満月よりも見かけの大きさが約12%小さくなる」と説明する。

 月が地球に与える影響の中で最大のものは潮汐力だと同氏は指摘する。月の重力が地球を引っ張り、中央付近をわずかに膨らませて潮の満ち引きを起こす。

 今夜の満月は地球からの距離が遠いため、この力が通常の満月より15%小さくなるが、その影響はごく小さい。サムラ氏は、「頻繁に海に出ている人しか気付かないかもしれない」と話す。熱心な天文ファンなら、月がいつもより少し控えめに見えることに気付くかもしれない。「普段から天体観測をしている人なら、最初は気付かないかもしれないが、写真を撮ったり望遠鏡や双眼鏡で観測したりすることで、いつもの見慣れた満月よりわずかに小さいのがわかるだろう」。

 来年2011年の最も大きく明るい満月は3月19日、最も遠く小さい満月は10月12日に見ることができる。

巨大なくちばしで攻撃=「恐鳥」の一種、化石分析―600万年前、南米に生息

 南米アルゼンチンの約600万年前の地層から発見された「恐鳥」の一種の頭骨化石を詳しく調べたところ、巨大なくちばしをおののように振り下ろし、獲物を捕らえていた可能性が高いことが分かった。同国のラプラタ大付属博物館や米オハイオ大などの国際研究チームが22日までに米オンライン科学誌プロス・ワンに発表した。
 恐鳥は、恐竜絶滅後に出現した飛べない大きな鳥。約6000万年前から約200万年前まで主に南米大陸に生息した。化石が見つかった「アンダルガロルニス」は中型で、体の高さが1.4メートル、体重が40キロと推定され、頭骨の長さが37センチ。
 くちばしは側面から見ると巨大だが、上から見ると幅が狭い。先端はワシのような鋭いかぎ形となっている。頭骨をコンピューター断層撮影装置(CT)で調べると、ワシなどに比べて非常に頑丈な構造だった。一方、かむ力は比較的弱く、獲物に突進してはくちばしを振り下ろすことを繰り返し、餌食にしていたと考えられるという。 

DNA修復を妨げる遺伝子=がん新薬に応用期待―慶大と産総研

太陽の強い紫外線や体内の活性酸素などの影響でDNAが傷つくと、細胞の活動がいったん停止して修復作業が行われるが、普段はこの修復作業が始まらないように制御している遺伝子が見つかった。
 慶応大医学部の中田慎一郎特別研究講師と産業技術総合研究所の夏目徹チームリーダーらが19日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
 がん細胞の場合、この遺伝子「OTUB1」の働きを抑えれば、細胞の活動を止め、さらに死に追い込める可能性があり、がんの新薬開発につながるかもしれないという。
 DNAが損傷すると、たんぱく質が鎖状につながった「ユビキチン鎖」が目印として結び付き、細胞活動が停止して修復作業が始まる。OTUB1遺伝子が作る酵素は、このユビキチン鎖の形成を妨げる役割がある。 

カイメンに似た原始動物化石=6億3500万年前、豪州で発見

オーストラリア南部の約6億3500万年前の地層から、原始的なカイメン(海綿)に似た動物の微小な化石が見つかったと、米プリンストン大などの研究チームが18日、英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス電子版に発表した。体が比較的硬く、形が分かる動物の化石としては、最古の可能性があるという。
 カイメンは英語ではスポンジと呼ばれる。現在は合成樹脂の製品が日常的に使われるが、昔は天然のカイメンが利用されていた。主に熱帯の海に生息し、海水に含まれる微生物をこし取って栄養にしている。
 DNAの解析では、カイメンは8億5000万年前から6億3500万年前に出現したと推定されており、もっと古い時代の化石は残っていないか、発見するのが困難と考えられるという。 

温暖化でも南極の氷が溶けない理由

温暖化が進行している最中なのに、南極海では氷の量が増加している。科学者たちはこの矛盾を追求してきたが、やっとその理由が解き明かされたようだ。最新研究によると、まもなく逆転現象は解消して南極でも氷が溶け始める可能性があるという。

 研究チームのリーダーで、アメリカのジョージア州アトランタにあるジョージア工科大学のリュー・ジーピン氏は、次のように話す。「過去30年間の衛星データによると、北極海で氷が減少する一方、南極海の氷はなぜか拡大を続けている。このパラドックスの理由を提示することができたと思う」。

 今回の最新研究は、1950〜2009年の海面温度と降雪量の観測データを組み込んだ気候モデルに基づいている。分析の結果、20世紀中の長期的な海水温の上昇が、南極上層大気の降水形成を促していたと判明した。この水分は地表に降りてくるころには雪へと変わっている。

 降雪量の増加により、海洋の最上層では塩分濃度が減少し、それに伴い密度が低下する。通常なら真水が凍る南極海の上層は塩分濃度が高く、深層部へと沈んでいく。この下降流が比較的温かい深層水の湧昇(ゆうしょう)をもたらす。しかし、上層が蓋のように安定してしまうとこのプロセスが阻まれて、海氷の融解も減少していたのだ。

 リュー氏は、「このデータから判断すると、20世紀中の南極海の氷の成長は、おおむね長期的な海水温の変化を反映していたと考えられる」と話す。「しかし、21世紀に入ると事情が変わる。人為的要因による急速な地球温暖化が南極地方の気候に影響し、海氷の融解を加速すると予測される」。

 温室効果ガスの増大により南極沖の海洋温度の上昇が続くと、南極でも雪ではなく雨の降る量が増え、雪や氷が急速に溶け出すようになるという。氷の融解が進むと、暗い海洋が顔を出す。そのため、氷が反射していたはずの太陽光がより多く吸収されることとなる。こうして、海洋の温暖化と海氷の融解はさらに進行していく。

「本来の長期的な上昇傾向から温室効果ガスによる温暖化へと移行するのが“いつ”とは断定できないが、今世紀中に始まるだろう」とリュー氏は言う。

 南極海は世界で最も生物が豊かな領域だ。「海氷が減少すれば、生態系に甚大な影響を及ぼすと考えられる」とリュー氏は話す。例えば、南極に生息する種の多くは、エサの採取や生存そのものを海氷に依存している。自然保護団体も、温暖化が続くとペンギンなどさまざまな種が絶滅すると懸念している。

 リュー氏はさらに、「南極の海氷の消滅は、世界中の海水の循環過程にも大きな混乱をもたらす可能性がある」と話す。南極沖の海洋には、地球で最も低温で高密度の海水が存在している。これが、ベルトコンベアのように地球規模で流れる海洋大循環の“原動力”となっているのだ。海洋生物の最大4分の3は、この海洋循環に栄養分を運んでもらっている。

 アメリカのコロラド州ボルダーにあるアメリカ国立雪氷データセンター(NSIDC)のウォルター・マイヤー氏は、今回の研究を受けて次のように話す。「南極でも海氷の融解が加速するという予測は以前からあったので、納得できる結果だ。進行が遅いだけで、北極での顕著な温度上昇による氷の融解が南極でも起きる可能性がある」。

 一方、コロラド州ボルダーにあるアメリカ国立大気研究センター(NCAR)の上級研究員であるケビン・トレンバース氏は、「今回の研究には重大な欠陥がある。オゾンホールの影響を組み込んでおらず、まだ“あまい”のだ」と話す。

 夏季の南極では、オゾンホールの影響で通常より明るい色の雲が形成され、地球温暖化に対する防護壁の役割を果たしてきたと言われている。「近年の調査により、縮小傾向のオゾンホールは、やがてふさがってしまうかもしれないと考えられている。クロロフルオロカーボン(CFC)など、オゾン層破壊物質の世界的な利用抑制策が効果を表し始めたためだ。しかし、オゾンホールが解消すると太陽光を反射する雲も無くなってしまう。南半球の温度は、現在のモデル予測値よりも早いペースで上昇する可能性がある」。

 今回の研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に8月16日付けで掲載されている。

海の色が熱帯低気圧の進路を決める?

最新の研究によると、海の色には熱帯低気圧を動かす力があるという。地球温暖化によって海の色がすでに変化し始めている可能性があり、熱帯低気圧の進路を見極める上で役に立つかもしれない。

 アメリカ、ニュージャージー州プリンストンにある地球物理流体力学研究所の海洋学者アナンド・グナナデシカン氏が率いる研究チームは、コンピューターシミュレーションを用いて、海の色と大型の熱帯低気圧との関連性を調べた。大型の熱帯低気圧は、北大西洋と太平洋北東部ではハリケーン、太平洋北西部ではタイフーン(台風)と呼ばれる。

 グナナデシカン氏は、「私たちのチームは複数の気候モデルを開発しており、そのモデルを現実に近づけることが私の仕事の1つだ」と話す。海の色など、これまであまり研究されてこなかった因子を詳しく分析することもモデルを現実に近づける方法の1つだ。

 北太平洋では葉緑素を持つ微生物である植物プランクトンが豊富なため、海の色は主に緑色になる。海に浮かぶ植物プランクトンは太陽光を吸収することで、海面温度を比較的高く保つ。植物プランクトンの数が減少すると、太陽熱はより深い水中にたまる。

 研究チームは気候モデルを使って、北太平洋の環流に住む植物プランクトンが減った場合のシミュレーションを行った。環流とは、海洋全体に及ぶこともある大きな渦状の海流である。「北太平洋の環流はすでに水が非常に澄んでいるが、これを完全な透明だと仮定した」とグナナデシカン氏は説明する。

 環流の水を透明にすることで、環流の最も浅い水域から熱が奪われた。海面温度が高いことが熱帯低気圧の大型化の一因であるため、この変化は極めて重要だ。

 熱帯低気圧は、赤道沿いの熱帯の暖かい水域の上空で発生し、北または南の亜熱帯地方に向かって進む。例えば太平洋北西部では、熱帯低気圧は北上して日本と中国に上陸するのが普通だ。

 しかし、コンピューターモデルで北太平洋の環流から色と熱を取り除いたところ、熱帯地方から北上する熱帯低気圧の数が通常の3分の1に減少した。海面温度が下がると熱帯低気圧そのものが存在し続けられなかった。

 北へ行くほど海の色が薄くなる場合、熱帯低気圧は赤道沿いに進み、フィリピン、ベトナム、タイに上陸する傾向が見られた。「環流の色が薄くなることによる影響は非常に大きかった。本当に驚いた」とグナナデシカン氏は明かす。

カリフォルニア州にあるスクリップス海洋研究所の生物地球化学者で、今回の研究には参加していないマンフレディ・マニッツァ氏によると、環流は植物プランクトンなどの生命体を育む能力が低いという意味で「生産性が低く、海の砂漠と言える」という。「気候が温暖化すれば生産性はさらに下がる可能性が高い」。

「Nature」誌に最近掲載された別の研究によると、海洋の透明化はすでに進行している可能性がある。地球温暖化による海面温度の上昇に伴い、海の深い部分にある栄養素を豊富に含む低温の水と混ざり合うことが少なくなり、浅い水域に住む植物プランクトンが栄養不足で死滅しつつあることが明らかになったという。

 しかしコンピューターモデルの研究を率いるグナナデシカン氏は、最近数十年間でプランクトンが増加したことを示す研究も発表されていると反論する。「海に住む葉緑素を持つプランクトンの数の変化を推定する際の大きな問題は、まともなデータがNASA人工衛星に搭載された海色センサー SeaWiFS(Sea-viewing Wide Field-of-view Sensor)による12年分のデータしかないことだ」。

 同氏の研究チームは今後、現在ある人工衛星のデータを用いて海の色の変化を追跡し、現実世界でも海の色と熱帯低気圧の進路とに関連性があるのかどうかを確かめることにしている。

 この研究は「Geophysical Research Letters」誌に近日中に掲載される予定である。

コロンビアで新種のサル:ティティ

2010年8月12日、コロンビアのアマゾン熱帯雨林で新種のサルが発見されたと環境保護団体が発表した。“もじゃもじゃ”の赤いアゴひげがなんとも愛らしい。

ティティ属の一種(学名:Callicebus caquetensis)で、1960年代に初めて科学者の目に触れた。その後はコロンビア南部カケタ県で繰り広げられた長年の政治闘争が調査を阻んでいたが、2008年にようやく実現し新種のサルと確認された。

「ネコほどの大きさで、サルとしては珍しい一夫一婦制が興味深い」と、調査責任者で首都ボゴタにあるコロンビア国立大学の霊長類学者トーマス・デフラー(Thomas Defler)氏は話す。オスとメスのつがいが尾をからませて寄り添う姿が樹上で頻繁に目撃されるという。

国際環境保護団体のコンサべーション・インターナショナル(CI)が12日発表した。生息数は250匹未満とみられ、森林破壊で絶滅の危機にひんしているという。
エクアドルやペルーとの国境付近を流れるアマゾン川の支流域で、13の群れが確認された。